利益感度分析(後編)

佐倉市で税理士事務所を開業している若手税理士の中村裕史です。

当ブログにお越しいただきありがとうございます。

利益感度分析の簡便法

全編では利益感度分析の算出方法をお伝えしましたが、利益感度分析をするには、まず各4要素(価格・数量・変動費・固定費)の損益分岐点売上高を求めそこから、各4要素(価格・数量・変動費・固定費)の実際額の比率を出すという2段階の計算をしなければ求めることができませんでした。今回はその2段階の計算方法を用いなくても簡便的に計算できる方法をご紹介します☺
それは・・・経常利益を各4要素(売上高・粗利益額・変動費・固定費)で除するだけです!!

上記の図は全編と同様なものになります。
試しに各4要素(売上高・粗利益額・変動費・固定費)で除してみると・・・

価格の利益感度 :100÷1,000=0.1☞10%
数量の利益感度 :100÷500=0.2 ☞20%
変動費の利益感度:100÷500=0.2 ☞20%
固定費の利益感度:100÷400=0.25 ☞25%

なんと今まで2段階で計算していた数値と一致しました!!つまり経常利益を各4要素(売上高・粗利益額・変動費・固定費)で除するだけで簡便的に利益感度分析が行えるのです。ただし価格は売上高を使い、数量は粗利益額を使うという点だけ異なりますのでこの点だけ注意してください。分子の経常利益を各4要素(売上高・粗利益額・変動費・固定費)で除するということは、分子は一定で分母が変化するので、分母が大きいほど利益感度は高い(利益効率が高い)ことを意味します。つまり売上高が一番大きくなるので、単価を上げることが一番利益効率が良いということになります。(変動費が売上を超えれば変動費になりますが、一般的なビジネスモデルでは考えられないので)

簡便法の証明

利益感度分析をするには、まず各4要素(価格・数量・変動費・固定費)の損益分岐点売上高を求めそこから、各4要素(価格・数量・変動費・固定費)の実際額の比率を出すという2段階の計算をしなければ求めることができませんでしたが、なぜ経常利益を各4要素(売上高・粗利益額・変動費・固定費)で除するだけで簡便的に利益感度分析が行えるのか証明をしたいと思います。興味ない方は飛ばして結構です💦

価格P・数量Q(売上高PQ)・変動費VQ・粗利益MQ・固定費F・経常利益Gとすると・・・
G=PQ△VQ△Fとなります(単に売上高△変動費△固定費=経常利益ということです)
P’を損益分岐点単価とするとP’Q=G+VQ+F
P’=(VQ+F)/Q☞つまり前編と同じ価格の損益分岐点です!
実際の価格をPとすると・・・
(P△P’)/P=G/PQになれば良いので左辺をいじっていくと
1△{(VQ+F)/Q}/PQ=1△(VQ+F)/PQ=(PQ△VQ△F)/PQ=G/PQとなります。

少し算式ばかりで、分かりづらいですが興味あれば理解してみてください!

利益感度分析の方法

先ほども書きましたが、分子の経常利益を各4要素(売上高・粗利益額・変動費・固定費)で除するということは、分子は一定で分母が変化するので、分母が大きいほど利益感度は高い(利益効率が高い)ことを意味します。
ですので、売上高・変動費・粗利益・固定費の絶対額で利益効率がわかります・・・基本的には売上高が一番金額の絶対値が大きくなりますので、価格戦略が一番利益効率が良いということになります。
ただしそれだけでは利益感度分析の意味がありません。あくまで先ほどの考え方は変数が1つという考え方なのです!つまり、価格を10%上げても他の要素(動費・粗利益・固定費)は変わらないという前提の下での利益効率となります。価格戦略で価格を10%上げれば、もちろんそれに伴い数量が落ちるのは容易に想像ができます。(変動費や固定費も若干変化する可能性もあります。)したがって、価格戦略を考える際に、他の要素の変化も予測して行うことが大事となってきます。また価格を10%上げるということは、単価も影響します!100円の商品を10円値上げするのと100万円の商品を10万円値上げするのでは、値上げによる数量の影響は当然ながら単価が高い方が影響を受けます。
今回の設例では、価格は利益感度10%に対し数量は20%となっております。価格と数量の感度は1対2となっています。つまり価格を10%上げたことにより数量が20%下がると、経常利益は変わらないということになります。したがって、価格を上げつつ、数量への影響が最も低くなる(利益効率が最大)となるよう、価格を設定していくのが重要となってきます。そのための判断材料として利益感度分析を使うのです!

利益感度分析の実際例

実際に利益感度分析をうまく利用している(実際それを考えているのかはわかりませんが💦)例としては、ポテトチップスがわかりやすいと思います(笑)普段我々がよく目にするポテトチップス実はリニューアルの時に内容量が減っていることがあります!つまり利益感度分析でいうと変動費を下げて利益効率を上げているのです。(もちろん物価上昇により、同程度の利益を確保する必要があるためでもありますが)その後、しばらくたって価格を若干上げます(といっても単価が低いので価格を10%くらい上げることも可能です)若干上げるので当初は数量が減りますが、またV字回復します。その後また内容量を減らす・・・といった繰り返しとなります。またコンビニのおにぎりもリニューアル時にそのようなことがあったり、リニューアルと同時に見た目も変えるため、数量への影響を最大限落とすことも考えています。これは利益感度分析から見ると非常に利益効率を意識した戦略だと私は感じてます☺特に数量商売は価格戦略はしやすいです(単価を上げることによる数量の影響が少ないため)
最終的には各4要素(売上高・粗利益額・変動費・固定費)の感度分析とそれの影響度を加味して戦略を立てていくということになります。利益感度分析をして経営改善をしたいという方はぜひ当事務所へご連絡ください☺

 

 

 

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